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文春新書『英語学習の極意』著者サイト

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観劇・読書メモ 30

平成30年1月1日から6月30日の実況です。項目ごとに、日付を遡る形で記載しています。
ひとつ前の 平成29年7月11日~12月31日 の実況はこちら。
ひとつ後の 平成30年7月1日~   の実況はこちら。



観 劇:

【観劇マナー】
上演中、
コンビニのビニール袋ノド飴の小袋のシャカシャカ音は、劇場じゅうに響きます。
ビニール袋は手元に置かず足元に。ノド飴は開演前に口に含む。
上演中は、暑くても扇子で あおがない。
(扇子がちらちら動くと周囲や後ろの人たちに目障り!)

【演劇の通ぶって
上演中に変なタイミングで笑う困ったひと】
赤坂レッドシアターや下北沢のスズナリのような小劇場で、どてっとした黒い鞄をひざに置き、
小太りでハゲ頭の男を見たら要注意。一度、注意したのだけど、なかなか治らないようだ。みんなで注意してやりましょう。



300321 赤道の下のマクベス @ 新国立劇場 小劇場 作: 鄭義信、出演: 池内博之、平田 満、浅野雅博、尾上寛之
(B・C級戦犯として囚われた日本人3人と朝鮮人3名のばらばらの経歴とキャラが交錯する。ばらばらだからこそ、日本組と朝鮮組のありふれた二極分化に堕さず、観るに堪える名作になった。)

300318 ジキル&ハイド @ 東京国際フォーラム ホールC 上演台本: Leslie Bricusse  音楽: Frank Wildhorn 演出: 山田和也、出演: 石丸幹二、笹本玲奈、宮澤エマ、田代万里生、畠中洋、花王おさむ、福井貴一
(東京千穐楽、2階最前列で照明効果がよく見えた。本作は「自由」がキーワードだ。自分の知らない心の奥底で自由を求めていたジキル。得られたハイドという窮極の自由は、あまりの不自由をジキルに強いた。エマの腕のなかで死ぬとき、自由の祈りに送られる。エマとルーシーのふたつの愛のそれぞれの深さ。どこまでも信じ、どこまでも尽くすエマの愛; 鮮烈な目覚めと切ないあこがれに彩られたルーシーの愛。カテコで石丸幹二さんが「初日とはずいぶん異なる、いい仕上がりになってきた」、同感です。)

300311 ジキル&ハイド @ 東京国際フォーラム ホールC 上演台本: Leslie Bricusse  音楽: Frank Wildhorn 演出: 山田和也、出演: 石丸幹二、笹本玲奈、宮澤エマ、田代万里生、畠中洋、花王おさむ、福井貴一
(最前列。1週間前に見たルーシーが登場の瞬間は、淑女エマの恥じらいが残っている感じがしたが、いまやルーシーは完全にひとつの人格を獲得していた。2度目の観劇では、福井貴一さん演じるエマの父の、娘をおもいやる情の深さに打たれた。|右隣の咳男に第1幕上演中に飴を手渡したら感謝された。)

300304 ジキル&ハイド @ 東京国際フォーラム ホールC 上演台本: Leslie Bricusse  音楽: Frank Wildhorn 演出: 山田和也、出演: 石丸幹二、笹本玲奈、宮澤エマ、田代万里生、畠中洋、花王おさむ、福井貴一
(夢みたルーシー玲奈。あばずれになりきれなくて、エマのような細やかさと心優しさを色濃く残したルーシーだった。第2幕後半、ジキルの手紙を読んだ彼女の目は輝いて、全身から幸せをほとばしらせる。ハイドの殺しの場面では小道具がいちだんと進化し、死人の口から仕込み杖の先を突き出させる。前から3列目だったが、あえてオペラグラスで鑑賞。|右隣の男、手をしきりに動かすコマッタちゃんだったが、幕間のひとことでイイ子になってくれた。)

300303 シャンハイムーン @ 世田谷パブリックシアター 作: 井上ひさし、演出: 栗山民也、出演: 野村萬斎、広末涼子、辻萬長、山崎一、鷲尾真知子、土屋佑壱
(無地の漢ローブ姿の野村萬斎さんの魯迅は、肖像写真から匂い立つあの魯迅だ。史実をあまり離れぬよう意識したのか、筋書きにおもしろみはない。第2幕後半、失語症を発症しだした魯迅が言い間違いの連発ついでに「天皇制」を場違いに口走らせて笑いをとるイヤラシサがいかにも井上ひさしだ。)

300301 ドレッサー @ 下北沢・本多劇場 作: Ronald Harwood、訳: 松岡和子、演出: 鵜山 仁、出演: 加藤健一、加納幸和、西山水木、岡崎加奈、一柳みる
(カトケンいちの当たり役だ。「リア王」などシェークスピア一途の座長俳優は老い、出番のセリフを忘れている自分に驚愕する。出番の王が登場できないステージを必死のアドリブでつなぐ脇役らを客席の反対側から観るのはサイコーのコメディーだ。市村正親さんが演ってもおもしろそう。)

300224 密やかな結晶 @ 東京藝術劇場プレイハウス 作: 小川洋子、脚本・演出: 鄭義信、出演: 石原さとみ、村上虹郎(にじろう)、鈴木浩介、山内圭哉(たかや)、ベンガル
(最前列の右端の席で観た。2週間前は「ピグマリオン」のさとみさんを感じたが、いまはずいぶんしっとりした「わたし」になっていた。失われるものは、痴呆かもしれないし、身体障碍かもしれないし。さまざまな強いられた喪失と、その再生の予感を共有する劇だ。)

300217 蜷川幸雄三回忌追悼公演 ムサシ @ Bunkamura シアターコクーン 作: 井上ひさし、演出: 蜷川幸雄、出演: 藤原竜也、溝端淳平、吉田鋼太郎、鈴木杏、六平直政、白石加代子
(藤原武蔵と溝端小次郎の巌流島の決闘でいきなり幕が開き、その6年後の両者の再会話。2列目で名優たちの絡みを存分に味わった。「みんな成佛を願う幽霊でした」のどんでん返しはさすがだが、いかにも共産党のひさし君のイヤラシサで、戦の原因の第一義は皇室を起点として官軍・賊軍の概念にあると役者に説かせる場面あり。)

300210 密やかな結晶 @ 東京藝術劇場プレイハウス 作: 小川洋子、脚本・演出: 鄭義信、出演: 石原さとみ、村上虹郎(にじろう)、鈴木浩介、山内圭哉(たかや)、ベンガル
(劇終末に「復活」の象徴として舞台中に舞う赤い薔薇の花瓣が心をとらえる。言葉と実体が統制によって徐々に失われる状況は、いまそこにある全体主義を示唆していて深い。石原さとみさんは、すっぴんに近い薄化粧だったが美しい。一本調子なところがなく、ストーリーの襞に寄り添う名女優だ。)

300205 新国立劇場演劇研修所第11期生修了公演 美しい日々 @ 新国立劇場 小劇場 作: 松田正隆、演出: 宮田慶子、出演: 川澄透子(とうこ)、バルテンシュタイン永岡玲央(れお)、上西佑樹(うえにし・ゆうき)
(昭和50年代の安アパートの隣室どうしで起こった小さく大きなドタバタが、時を経て熊本県八代でつながる。舞台美術は劇終末の不知火の光景が絶品。)


イベント:

291005 奥泉光×いとうせいこう 文藝漫談 season 4 島尾敏雄『死の棘』 @ 成城ホール(世田谷区成城六丁目)
(客席がいつもより低調。『死の棘』は長篇だが予定調和的作品のように思えた。終演時のフルート演奏+朗読は、これまででいちばんよかったかも。)


観 映:

300218 MET Live Viewing 2017-18 Giacomo Puccini: "Tosca" @ 東劇 指揮: Emmanuel Vuillaume 演出: David McVicar 出演: Sonya Yoncheva, Vittorio Grigolo, Жељко Лучић/Željko Lučić
(平300127上演。トスカ、カヴァラドッシ、スカルビア男爵の3人の性格の対照が際立つ。第1幕は、やや間のび。いっぽう終幕直前にトスカがカヴァラドッシの死に気がつくシーンはあまりにあっけない。恋する男を冥界から呼び戻そうとすがりつくシーンがほしかった。プッチーニの問題か、演出の問題か。)

300212 苦銭(苦い銭) @ シアター・イメージフォーラム 監督: 王 兵
(解説も演技もなしで、ここまで長尺で撮るかと。普通ならたぶん半分にカットする。しかしこの延々とした間延び感こそが苦銭をめぐる環境なのだね。)

300130 Gauguin - Voyage de Tahiti(ゴーギャン タヒチ、楽園への旅) @ Bunkamura ル・シネマ1 主演: Vincent Cassel
(ゴーギャンのタヒチ行きを、てっきり能天気な快楽旅行とばかり思っていたが、その真逆。フランスで行き詰った末の、食い詰め者のなれの果てだった。言われてみれば、そうだったに違いない。)

300123 Willkommen bei den Hartmanns(はじめてのおもてなし) @ シネスイッチ銀座2 監督: Simon Verhoeven 出演: Senta Berger, Heiner Lauterbach, Eric Kabongo
(ドイツ語作品。ドイツで平28年に400万人が観て興行収入1位になった作品。ホームドラマふうでいて、世相批判あり、文化間・世代間のギャップを語る。ナイジェリア難民のディアロ役のカボンゴさんがいい。)

300118 Kongens nei/The King's Choice(ヒトラーに屈しなかった国王) @ シネスイッチ銀座2 主演: Jesper Christensen
(緊張感の続く展開ではあるが、クライマックスのはずの国王と駐ノルウェー独大使の対決はあまりにあっけなかった。本心では本国政府の方針に承服していない、ひとのいいドイツ大使を罵倒する国王のことばには、もっと深みが欲しかった。)

300117 Final Portrait(ジャコメッティ 最後の肖像) @ TOHOシネマズ シャンテ 監督: Stanley Tucci 出演: Geoffrey Rush, Armie Hammer, Clémence Poésy
(昭和39年のパリ。でも19世紀のようにも思える。とことん追求するという行為は、わがままの軽やかさだ。ジョフリー・ラッシュさんの気合の入れ方と力の抜き方のメリハリがサイコー。)


読 書:

<図書館などから借りて読了>

300711 E=mc2 のからくり エネルギーと質量はなぜ「等しい」のか   (講談社ブルーバックス、平成30年刊)   山田克哉 著
(宇宙のイメージがアートのように脳に血走る。宇宙のなかで元素周期表にある原子から構成されている物質は 5% にすぎず、残るは暗黒物質とダークエネルギーだとは! そして、ダークエネルギーの理論値と観測値が10の120乗もの差だとは! ここに神の存在を見るね。)

300708 理系のための「実戦英語力」習得法 最速でネイティブの感覚が身につく   (講談社ブルーバックス、平成30年刊)   志村史夫 著
(類書のなかでは良心的。英英を薦めているのは良いが、Hornby とは古すぎる。確立しちゃったヒトは、こうなっちゃうのかね。)

300708 地図と領土    (筑摩書房、平成25年刊)   Michel Houellebecq 著、野崎 歓(かん)
(己れを凶悪の犠牲に捧げつつ架空のアート作品を描写しながら西紀2047年へ駆け抜ける。)

300628 言ってはいけない中国の真実    (新潮文庫、平成30年刊)   橘 玲 著
(賄賂の不受領が不道徳とされ、かつ賄賂受領後に見返りを与えぬのも不道徳とされる社会原理が覆う国。激減する実働農民に激増する不労幹部がたかる国。ソフトパワーも同盟国もない国。アフリカ諸国に自国領のごとくにインフラ整備をした国。)

300628 千利休 無言の前衛    (岩波新書、平成2年刊)   赤瀬川原平 著
(千利休が、寡黙だが開かれた前衛であったことを、当代の前衛が自然体で語る。)

300625 服従    (河出文庫、平成29年刊)   Michel Houellebecq 著、大塚 桃 訳
(政治哲論とエロスをたゆたう。知識人から見たイスラム化した2022年フランスだが、小説として成立させるために、反イスラムのレジスタンスが一切出てこないのが非現実すぎるかな。『O嬢』をひいたのは、うまいね。)

300620 終わった人    (講談社、平成27年刊)   内館牧子 著
(ぼんやりボサぁっと生きる退職者の話と想像して「誰が読むものか」と思っていたが、「終われない人」の話だった。|道子曰く ≪男には何かどっか破綻した空気がないと、もてないってこと。≫)

300619 西洋美術の歴史 8 20世紀 越境する現代美術    (中央公論新社、平成29年刊)   井口壽乃(としの)・田中正之・村上博哉 著
(けっきょく「アート」とは、自ら「アート」のカテゴリーで生きていると自称する「アーティスト」が行うこと、としか定義できない時代になったわけだ。マルセル・デュシャンもナム・ジュン・パイクも偉大だけど、いけずだね。絵画に初めてコラージュを取り入れたのはピカソだというが、本当か!? ピカソの「朝鮮の虐殺」見てみたい。)

300615 「桶狭間」は経済戦争だった 戦国史の謎は「経済」で解ける   (青春新書、平成26年刊)   武田知弘 著
(信玄政権が徹底搾取した貧しい甲斐に比べると、信長の豊かさの先進性が際立つ。畿内が治まったのは、関所という財源を豪族から取り上げたことによるのだね。)

300613 トップリーグ    (角川春樹事務所、平成29年刊)   相場英雄 著
(さすが時事通信で鍛えられた記者。じつにリアルな現代政治小説。)

300610 韓国と日本がわかる最強の韓国史    (扶桑社新書、平成30年刊)   八幡和郎(やわた・かずお)
(ようやく信用できる朝鮮史に出会えた。百済からの帰化人はほとんど漢人だったし、それ以前の日本への大陸移民も呉の国あたりから半島沿岸づたいにやってきた、というのは腑におちる。韓国併合後の日本で、内地の朝鮮人に参政権があり、外地の日本人に昭和20年4月まで参政権がなかったと初めて知った。)

300610 バッタを倒しにアフリカへ    (光文社新書、平成29年刊)   前野ウルド浩太郎 著
(孤独相/群生相の相変異があるのがバッタ=locust で、無いのがイナゴ= grasshopper なんだって。)

300608 火花   (文藝春秋、平成27年刊)   又吉直樹 著
(この素材はほんらい短篇小説に収めこむべきものだね。文体がときどき漱石の『それから』風の内省モードになるね。)

300603 経済で謎を解く関ケ原の戦い    (青春新書、平成30年刊)   武田知弘 著
(家康が財力・動員力では豊臣家を凌駕しながらも、南蛮貿易ルートを持たぬがゆえに軍備では不利で、野戦で一気に勝負するしかなかった事情が明かされる。)

300531 現代アートとは何か    (河出書房新社、平成30年刊)   小崎哲哉 著
(ジャンルの俯瞰に役立つ本だが、もし著者と実生活で接点があったら、のっけから いがみ合いそう。現代アートは「美」を扱うものではないと小崎氏は言うが、むしろ「美の再定義」をし続けているのが現代アートだと言うほうが適切だとわたしは思う。つまりアートとは何がしか脳の美中枢をうろついているものだと。|アート界でイデオロギーとしてのmovement は冷戦終結の1989年を以て途絶えたという指摘はなるほど。LA の The Broad やソウルのリウム、行ってみたいものだ。Artforum もそのうち読みこなしたいね。)

300526 アート×テクノロジーの時代 社会を変革するクリエイティブ・ビジネス    (光文社新書、平成29年刊)   宮津大輔 著
(QRコードで映像リンクを呼び出しながら読む新機軸の本だが、ぼくのスマホが対応してなくて残念。チームラボ、タクラム、ライゾマティクス、ユージーンの4つの映像アート集団を、日本や欧州に古来存在した工房のコンテクストでとらえ直す視点は正解だ。)

300520 国のない男    (日本放送出版協会、平成19年刊)   Kurt Vonnegut 著、金原瑞人(かねはら・みずひと)
(原著 A Man Without a Country. 「アラブ人がバカと思うなら、桁数の多い割り算をローマ数字でやってみろ」ってとこ、サイコー。ヴォネガット氏の本領たる SF 作品も読んでみないとね。マーク・トウェインとトクヴィルを読めと言ってるね。)

300514 世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」    (光文社新書、平成29年刊)   山口 周(しゅう)
(アートの本かと思ったら、正解がコモディティ化した今だから必要な経営哲理を説く良書だった。現代人が過去人の哲学書をひもとく意味は、そのコンテンツそのものからの学びにあるのではなく、むしろ哲学者が生きた時代に支配的だった考え方についてどのように疑いの目を差し向け考えたか、そのプロセスや姿勢からの学びにあると。)

3005011 フリーランスのための一生仕事に困らない本    (ダイヤモンド社、平成26年刊)   井ノ上陽一 著
(題名を真に受けるひとはいないと思うが、惹きはあるよね。ブログは情報提供でなく価値提供の場、つまり「知識ではなく、考え方やあり方を提供する。知識はネットでも本でも手に入るが、大切なのはそのウラにある考え方、つまり理由だ。その考え方こそが、差を生む部分である」。書くスキル、読むスキル、話すスキル、という3つの原点。)

300507 習近平帝国の暗号 2035    (日本経済新聞出版社、平成30年刊)   中澤克二 著
(2035年までに米国に経済面で追いつき 2050年には米国と一戦交えても勝てる国になるよう 新たな韜光養晦モードに入った、というのが著者の見立て。|韓国の学界に「楽浪郡は朝鮮半島にはなかった」説があるらしい。楽浪郡=平壌、帯方郡=京城、実はわかりやすいのだが。|経済を含めた中国の真のオーナーは紅二代。習近平は、特殊な政治力を持つ富豪らと企業を整理・再編し、味方として統合しつつある。習近平の次は陳敏爾というのが中澤さんの見立て。陳敏爾は、どうも人品が下卑て見えるのだがね。大人(たいじん)の成りをやがて身につけるのかな。)

300504 美術の力 表現の原点を辿る    (光文社新書、平成30年刊)   宮下規久朗(きくろう)
(本書で取り上げられた東京開催の展覧会はほとんど見ていたので、美術館の空気を思い出しながら読んだ。著者はキリスト者で、愛娘を失った哀しみがときに行間ににじむ。)

300427 西洋音楽史 「クラシック」の黄昏   (中公新書、平成17年刊)   岡田暁生(あけお)
(実作品をあるていど聴き込んでいるおかげで、いちいち腑に落ちる。音楽構成の発展過程もわかりやすいし、国民性とからめた解説も納得。おっつけ、聴くべき CD の指南役として古本を買うつもり。)

300420 死体は嘘をつかない 全米トップ検死医が語る死と真実    (東京創元社、平成30年刊)   Dr. Vincent di Maio & Ron Franscell 著、満園真木(みつぞの・まき)
(毎章が良質のテレビ番組のように読ませる。テレビではヒーローの検死医だが、じつは給与水準が相対的に低く、なり手が足りないらしい。)

300412 アキラとあきら   (徳間文庫、平成29年刊)   池井戸 潤 著
(カバーがチャラくて誤解していた。銀行員らががっぷり格闘する本格池井戸作品だった。平18~21「問題小説」誌連載の大幅加筆版。)

300407 クラシック音楽とは何か   (小学館、平成29年刊)   岡田暁生(あけお)
(紹介の音楽家や作品名を書き写すくらいならと読後に本そのものを買ってしまった。)

300405 コンピューターで「脳」がつくれるか AIが恋に落ちる日   (技術評論社、平成28年刊)   五木田(ごきた)和也 著
(語学習得回路がスイッチオンするにも、やる気の活性化が必要。それは、脳が知見を取り込むとき、巧みにというかズルくというか、とにかく対象を差別化するからだ。)

300327 MBA 100の基本   (東洋経済新報社、平成29年刊)   嶋田 毅 著
(論点のすり替えを疑え(重要でない部分の正当さを理由に全体を正当化。「どっちもどっち」論法。相手の言ったことを正確に引用せず議論する藁人形論法)|「なぜ?」を5回繰り返して深掘り|「ここから先のことはしない」と明確に決めることが大事|CSRではなく Creating Shared Value: 共通価値の実現|人間はいきなり解を与えられるとすぐに忘れるが、考えた末に自分で到達した答えはよく覚えている|ほんらいランダムなものを人間が作為的に作ると、妙にバランスがよくなりすぎてしまう|寿司(とくに高級ネタ)は客寄せであり、じつはアルコールで大きく稼ぐ|Win-Winとは、「自分は重視していないけれど相手が重視しているもの」とその逆をお互いに交換すること))

300323 脳の意識 機械の意識 脳神経科学の挑戦   (中公新書、平成29年刊)   渡辺正峰(まさたか)
(ほんらい2倍のページ数が必要な内容を新書判1冊に詰め込んだから、分りにくくついていけないベストセラー。本書が紹介する事例のいくつかを通じて考えたのは、「意識」とは、知覚・感覚の空白部を埋めようとする「辻褄合わせ」の自動システムではないかというぼくなりの仮説。15頁の「ネオン色拡散」は辻褄合わせの正方形を脳がかってに作り上げるし、241頁の「ヒーリング・グリッド錯視」は崩れた格子を脳がかってに修正してみせる。脳という存在はジキルのコントロールを離れて勝手に動く存在らしい。なんせ ≪被験者が手首を動かそうと思い立った時刻の0.3秒も前から、脳活動レベルが上昇しはじめる≫ (144頁)というのだから。)

300314 我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち    (講談社ブルーバックス、平成29年刊)   川端裕人(ひろと)著、海部陽介 監修
(標題の問いに、やはり多くの人たちが「ホモ・サピエンスによる先住人類の駆逐虐殺」を想像するらしいが、そういう虐殺の証左は無い由。標題に惹かれて読み始めたのだが、本書のほとんどは原人の化石発掘最前線の話。豪洲のアボリジニにジャワ原人のDNAが残っている可能性ありと。ホモ・サピエンスの並外れた移動性が、種としての拡大と均一維持につながったという締め、良し。)

300307 エネルギー産業の2050年 Utility 3.0 へのゲームチェンジ    (日本経済新聞出版社、平成29年刊)   竹内純子 編著、伊藤剛・岡本浩・戸田直樹 著
(東京電力の高い知性の実力のほどを知った。kWhの世界ばかり注目されるゆがんだ現代の先にある限界費用ゼロの電力が覆う豊穣世界において、kWhの価値が下落し 改めてkWの世界・ΔkWの世界の重要性に光が当たることを見越す。電力小売り業者をアダ花と喝破しているのが小気味よい。一般消費者は user experience (UX) coordinator からサービスを得る契約をし、電力会社は一般消費者へではなく UX coordinator に電力を売る時代になる、という予見がいちばんの驚きポイント。)

300306 限界費用ゼロ社会 <モノのインターネット>と共有型経済の台頭    (NHK出版、平成27年刊)   Jeremy Rifkin 著、柴田裕之(やすし)
(日本版向けの章で菅直人やルーピー鳩山を評価するあたり、再エネ礼讃のバカ本かとも思ったが、エネルギー・情報伝達・モジュールコンテナ輸送の限界費用がゼロになることで世界がどう様変わりするか論じ、それらが形成する入会地的な公共財をより多くのひとが享受するにはどうすればよいかを語る。この公の精神はエセではない。)

300228 思い違いの法則 じぶんの脳にだまされない20の法則   (インターシフト、平成24年刊)   Wray Herbert 著、渡会(わたらい)圭子 訳
(人は他人と組んで仕事に取り組むとより力を発揮するが、うまくいかないと他人がいるからいけないんだと思うって。英語gymも他人と組まないから集客の壁を突破できないんだな。不満はたまらないけど。|「人間は若いころから老人のステレオタイプを心の内に持っていて、まさにそのイメージに合った老人になる」。こわいね。ぼくは老齢の藝能人やアーティストをまずイメージしながら生きてるけど。制服を着るときは「歳相応」を意識しないから、いきいきできるって。じゃあやっぱ背広でいくか。)

300224 タイの永住日本人    (めこん、平成4年刊)   赤木 攻(おさむ)
(駐在日本人以前の、戦中を引きずる人たちからの聞き書きが読ませる。歴史のひだの貴重な記録。)

300223 戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊    (講談社+α新書、平成29年刊)   川島博之 著
(名著。都市民4億人と農民9億人超の別世界という切り口から、歴史も踏まえた縦横の語り。党軍は農民子弟で成り立ち、そのインセンティブは除隊後の役所・企業への天下り。軍費の着服・横流しも横行していて、強い軍にはなれないとの見立て。実業中国共産党の支持基盤は都市の中産階級であり、6・4に参加した学生らもその後は経済成長の果実を享受し、親の脛かじりの一人っ子らはさらに保守化しているから6・4は再発しない。農民暴動は武装警察が簡単に鎮圧する。習近平体制に変動があるとすれば、党内権力闘争しかない。米国にたてつくナンバー2国家の中国は今後長期の低迷期に入ると。)

300222 ハプスブルク帝国    (講談社現代新書、平成29年刊)   岩崎周一 著
(名著。ハプスブルク君主国と在地臣民の代表たる「諸身分」との協調・葛藤を見れば、ヨーロッパ史の定点観測ができる。)

300213 世界のエリートの「失敗力」 彼らが<最悪の経験>から得たものとは   (PHPビジネス新書、平成26年刊)   佐藤智恵 著
(ビジネススクールのそもそもの目的が、社会人としての失敗耐性を身につけさせることにあったとは! 育った環境しだいで個々人に異なるリスク許容量がある。経験を重ねると、頭のなかにバックアッププランが蓄積されてくる、と。商事の鈴木圭一さんの頁で、彼の夢追い人ぶりと苦労を初めて知った。)

300212 医者が教えるあなたを殺す食事生かす食事   (フォレスト出版、平成27年刊)   内海 聡(うつみ・さとる)
(ぼくはイワシやサバの刺身やばくだん納豆、塩からい味噌が好きなのだが、これが正しいことがよく分かった。「朝食抜き」から始め「調味料」「肉」から見直す。あらゆる砂糖はできるだけ避ける。空腹感はエネルギー充填完了のサインだとは、意表を突かれた。菜食主義に否定的なのは、同感。原始時代に人間は何を食ってきたかだ。「減塩」食品は塩の代わりに食品添加物を使っている。サラダ油も製造過程で劇薬使用。人間には牛乳を消化する酵素を持たず、牛乳を飲むと逆にカルシウム流出をもたらすとは!)

300211 タイ語読解力養成講座   (めこん、平成11年刊)   野津幸治・佐藤博史・宮本マラシー 著
(ガッと集中して学んでみたら語彙力の抜けが埋まり、タイ語の『星の王子さま』もすらすら読めるようになった。)

300208 真ん中の子どもたち   (集英社、平成29年刊)   温又柔(おん・ゆうじゅう Wen Yuju)
(北京語、台湾華語、台湾語の発話も織り込みながら、すらっと読める語学研修日記ふう。「小説」と呼ぶには、テーマ自体が弱いかな。)

300207 記憶の海辺 一つの同時代史   (青土社、平成29年刊)   池内 紀(おさむ)
(媚びることの少ない人であり、人生。反骨ではあるが、かといって自らの反骨に陶酔するわけでもない。ドイツ語圏の時空感が伝わる。時代に媚び、自分史を塗り替えては自らを誇った高橋健二を批判しているのは正当。Karl Kraus のレーゼドラマ Die letzten Tage der Menschheit を読んでみたい。)

300203 恋と歌舞伎と女の事情   (東海教育研究所/東海大学出版部、平成29年刊)   仲野マリ 著
(歌舞伎の傑作が人間の情感をいかにせつなく切り取っていることか。歌舞伎のちからへの不明を恥じた。それにしても、あの曽根崎心中が享保8年・基暦1723年以来幕府の心中もの公演禁止で昭和28年まで上演が絶えていたとは! 仮名手本忠臣蔵も、人気の見せ場は女どうしの葛藤。新版歌祭文の野崎村を語るに「木綿のハンカチーフ」を持ってくる著者 gamzatti さんのセンスも光る。)

300130 中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由 世界が見誤った習近平の冷徹な野望   (ビジネス社、平成29年刊)   富坂 聰(さとし)
(半分読み終えた段階では習近平礼賛本のごとくだが、なるほど国営企業バブルと天文学的汚職で満身創痍となった中共にポピュリズムの鉄槌を下して一定の秩序を取り戻し習の功績は認めざるをえまい。名指しせぬまでも、宮崎正弘に代表される(いつになっても当たらぬ)中国崩壊論や党内権力闘争を座標軸にした中国論を斬って捨てるのは正しい。各章冒頭の中国地図シルエットに台湾を含めていないのも、よい。)

300128 新軍事学入門 平和を望むなら、戦争の準備をせよ   (飛鳥新社、平成27年刊)   語り 飯柴智亮、佐藤優、内山進、北村淳、佐藤正久 聞き手 小峯隆生
(中国や朝鮮との戦は一義的に空と海の戦いであるべきであり、日本の陸軍もミサイル部隊を主力とすべし、大東亜戦争ですらなかった本土決戦を前提にした戦車隊は今や無意味で、現在の陸軍主力の日本軍を海・空軍主力の軍に再編すべしと個々の指摘が光る。しかし最後に佐藤優が曰く、何だかんだって言ったところで創価学会・公明党が動かなかったら日本政府はな~んも動けんのよと嘲笑いでドッと白ける本。)

300124 戦略思考トレーニング3 柔軟発想力    (日経文庫、平成26年刊)   鈴木貴博 著
(≪コンプライアンスが本当に重要なのは、社員の細かい行動よりも、経営陣の暴走を食い止めること。≫ ≪優秀なプログラマーのほうが「ぼーっ」としている時間が多い。プログラマーが実際に仕事をしているのは、実はぼーっと考えている時間であり、キーボード仕事は清書にすぎない。≫ 本能的に発動されるメンタルブロックをいかに回避するか!)

300120 戦略思考トレーニング2    (日経文庫、平成25年刊)   鈴木貴博 著
(FMラジオはRCAの技師が昭和10年に発明してたのに、FMが普及するとRCAのAMでの寡占が崩れる可能性があるからと、研究を抑制し、FM用の電波をFMラジオ局に割り当てないよう政府に働きかけたんだって。)

300118 戦略思考トレーニング    (日経文庫、平成25年刊)   鈴木貴博 著
(コンサルタントは、半年かけて事業戦略を構築するにしても、じつは初日に最終提言を議論して決め、あとの時間はその仮説の検証・補強のために使うんだって。)

291213 結局、勝ち続けるアメリカ経済 一人負けする中国経済    (講談社+α新書、平成29年刊)   武者陵司 著
(金利をGNP成長率が上回れば借入金による投資が活性化し経済が上向く、という公式が分かりやすい。米国が価格競争の激しい工業製品の輸出を放棄しオンリーワンのプラットフォーム産業を経済の中心に据えたことで、日本との関係は相互補完的となり、もはや日米経済摩擦の要因は無くなった。しかも米国はドル高でも生きていける国になったので、ドル高路線で経済規模を拡大する。いっぽうこれまで「タダ乗り」で成長してきた中国は価格競争の激しい工業製品輸出以外では国際市場に出られておらず、この先は一人負けだ。武者陵司節は分りやすくて説得力あり。)

291209 応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱   (中公新書、平成28年刊)   呉座勇一 著
(マイクロポリティクスの集積。足利将軍を有力守護大名が在京して支える体制が崩壊することで、大名とその数多の従者が領国で政治を行うようになり、これが文化伝播の基になった。単に公家が京から一時疎開していたからではなかったわけだ。美術館で多々見てきた洛中洛外図屛風が、理想の京を描いた絵空事だったというのも驚き。興福寺が大和国の守護に相当するポジションを享受していたとは。つくづく別格の寺である。)

291207 【図録】植民地朝鮮に生きる 韓国・民俗問題研究所所蔵資料から   (岩波書店、平成24年刊)   水野直樹・あんざこ由香・酒井裕美・勝村誠 編著
(さすが岩波書店で、何でも日本のことは否定的かつ斜に構えて見る。≪就労詐欺などで中国・南洋の部隊や戦場に連れていかれ「慰安婦」にさせられた女性たちの中に、朝鮮人女性も少なくなかった。≫(114頁)とあるが、「部隊に連れて」いったわけではない。部隊のソトである。「朝鮮人による就労詐欺めいた勧誘で」とハッキリ書いたらどうだ。)

291128 庶民たちの朝鮮王朝   (角川選書、平成25年刊)   水野俊平 著
(参考文献のほとんどが韓国人の手になるものであるが、李氏朝鮮時代について戦前に日本人が書いたはずの文献がまったく無視されている。漢字熟語にやたら朝鮮音のルビをふってあるのも気持ち悪い。肉が食えぬ代わりに、現代よりたくさん米の飯を食って蛋白質をとっていた、というのも信じがたい。経済学的傍証が欲しい。)

291123 陸王   (集英社、平成28年刊)   池井戸潤 著
(テレビドラマをようやく追い越せた。それにしても、名配役なり。)

291119 中国はなぜ軍拡を続けるのか   (新潮選書、平成29年刊)   阿南友亮(あなみ・ゆうすけ)
(名著。中国の経済政策が1980年代以来、共産党幹部を特権階級に仕立てた社会矛盾が、党軍に頼るしかない軍拡中国を固定化した。そもそも共産党が昭和24年に政権を取ってからもしばらくは、行政は党軍がになっていて、並み居る革命の元勲らは軍人揃いだ。筋金入りの軍国主義国家だったわけである。「漢人」というのが、清朝において満・蒙・蔵以外の被支配人民を指す概念であり、単一民族というわけではなかったという指摘にも納得。)

291110 リベラルという病   (新潮新書、平成29年刊)   山口真由 著
(日本の民進党や朝日・岩波を批判した掃いて捨てるほどある本かと思ったら、さにあらず。米国のリベラルとコンサバの対立軸を解説した、稀有な良書である。)

291106 仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること   (講談社+α新書、平成29年刊)   鈴木貴博 著
(深層学習で人工頭脳が飛躍的に進歩を続けて人間の知的労働を駆逐するも、メカニカルなところは進歩が遅いので意外にも低賃金の手作業は最後まで残る職業だという。ロボットが低コストのままだと人間が駆逐されてしまうので、それを阻止するには国際協定に基づいて各国政府が産業用ロボットや産業用AIには賦課金を掛けて、それをベーシックインカムとして国民に還元するのがよい、という論は新鮮だが、抜け駆けする国を阻止する対策が難しいね。)

291102 閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済   (集英社新書、平成29年刊)   水野和夫 著
(「飽くなき蒐集」が本領の資本主義が、地球上においてフロンティアが無くなったことにより成長不能の最終段階を迎えている。広がりすぎた戦線を閉じて、地域国家・地域共同体を主体とする世界に戻すべき、という論。グローバル経済や主権国家は、サイズ的に問題ありと。賢い立論なのだが、抽象論の蒸し返しが随所にあるのが惜しまれる。もっと多く具体例の提示がほしい。)

291019 魂の退社 会社を辞めるということ。   (東洋経済新報社、平成28年刊)   稲垣えみ子 著
(最後まで朝日新聞への愛を語る不器用な女性の能天気な手記。個別政策への不満は省庁が癌だと分っていそうなものだろうに、やたらと「安倍首相」に対して呼び掛けるあたりが、退職してもなお朝日オンナなのである。)

291011 鳥肌が    (PHP研究所、平成28年刊)   穂村 弘 著
(現実の微妙なひだのヒリヒリ瞬間を集め描く。これを月刊誌に「鳥肌と涙目」と題して連載できる穂村弘さんの力量おみごと。)

291010 日本人には思いつかないイギリス人のユーモア     (PHP研究所、平成15年刊)   北村 元(はじめ)
(ネタ本となるジョーク集から訳出したジョークを9章に分けて各章冒頭に総論を加えることでサマになった本。|やはりイチオシはこれ:≪ある国会議員が海外の実情調査を行うために、ある小国の空港に着いた。空港で彼は多数の新聞記者に取り囲まれた。「売春宿の視察に来たのですか?」ある記者が聞いた。国会議員は一瞬躊躇した。が、無視するわけにもいかず、丁寧に聞き返した。「ここには売春宿があるのですか?」翌日の新聞の見出しはこうなっていた。「視察の政治家が質問。売春宿はあるのか、と」)

291008 習近平と永楽帝 中華帝国皇帝の野望    (新潮新書、平成29年刊)   山本秀也(ひでや)
(教育欠如の青少年期に怨念を膨らませ「大一統(=一統をとうとぶ)」の中華エーソスに己を委ねる習近平の内実が600年前の皇帝と類似する。国際教養のない独裁者が治める大国の末路を本書はあえて語らぬが。それにしても永楽帝の時代の死刑や拷問の凄惨さは、夢に出てくるだけでも怖くて目が覚めそうだ。)

291007 日本株「100年に1度」の波が来た!    (中経出版、平成25年刊)   武者陵司 著
(書名はキワモノっぽいが、内実はここ数十年の経済原理を分りやすく解きほぐした良書。諸外国に後れをとって相対的な金融引締めに陥っていた日本だが、黒田日銀総裁と安倍首相のタッグで円高が是正され、それまでの苦節20年で筋肉質になった日本経済がようやく開花する。日本の課題は「製造業の余剰人員受入れ先たるサービス業の価格デフレ」の改善にあり。)

291001 ドイツ語おもしろ翻訳教室    (NHK出版、平成19年刊)   太田達也 著
(よくできた実践中級文法。「名詞を立てる機能動詞」の項に、今後の学習の指針を得た。etw in Gang setzen とか in Kraft treten のような。ausdruecken とともに zum Ausdruck bringen を覚えよう。)


<積ん読(つんどく)ほか、買って読了>

300623 帝都東京・隠された地下網の秘密    (新潮文庫、平成18年刊)   秋庭 俊(しゅん)
(事実を追う圧倒的迫力。戦前の東京に存在した秘密の地下鉄・電気自動車網をあぶり出した初めての一般人、というわけだ。それでいて、すごい話題になったわけでもない。日本は奥が深いね。)

300516 絵で見て納得! 時代劇のウソ・ホント    (遊子館、平成16年刊)   笹間良彦 著
(絵も達者な著者の薀蓄があふれ出す。作法まみれの江戸時代から維新による転換はすさまじかったか。徳川時代を通しての結髪の変遷を追うだに、わが無知を実感する。)

300515 自分を100倍も面白く生きられる ここ一番で壁をつき抜ける17のヒント   (青春出版社、昭和61年刊)   藤本義一(ぎいち)
(「ひとつのことを始めて面白いと感じられるのは、徹底しないと無理。器用を気取って何でも食い散らすのではなく、何かひとつ執着して極めることです」「人生の妙味は途中下車にある。スピードは遅いが各駅停車で景色を楽しみ、人間の機微を知る」)

300510 江戸百夢 近世図像学の楽しみ   (ちくま文庫、平成22年刊、原著 平成12年刊)   田中優子 著
(著者のことは好きではないが、図像選択と配合のセンスのよさは認めざるをえない。)

300508 年を歴(へ)た鰐の話   (文藝春秋、平成15年刊、原著 昭和16年刊)   Leopold Chauveau 著、山本夏彦 訳
(これを読んで山本夏彦さんにやっと 1 ミリ追いついた。)

300508 名画読本 日本画編 どう味わうか    (光文社知恵の森文庫、平成17年刊、原著 平成5年刊)   赤瀬川原平 著
(とぼけモードに入ることで、文章が自ずと真実を紡ぎ出してしまう。)

300326 密やかな結晶   (講談社文庫、平成11年刊、原著 平成6年刊)   小川洋子 著
(『1984』を別の切り口で書いたディストピア小説。『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』の逆で、どんどんマイナスされていく世界。この嘘っぽい設定からリアリティあるストーリーを作る著者の腕前すごし。石原さとみさん主演の演劇を観たおかげで本書とも出会えた。フィナーレの赤いバラの雨で再生のストーリーに仕立てかえた鄭義信さんの換骨奪胎のみごとさも知らされた。)

300309 日本が「人民共和国」になる日   (ワック、平成29年刊)   井沢元彦 著
(『カエルの楽園』と本書のパラレルワールドでアニメ+実写の映画を作ったらいい。『カエルの楽園』だけだと陰惨に終わるから、映画の最後は本書のミニハッピーエンドで締めるってわけ。)

300203 常識の世界地図    (文春新書、平成13年刊)   21世紀研究会 編
(このテの文化ギャップ百科みたいな本や記事は、昔はよくあったが、いまは実際に著者やカメラマンが現地に行った探訪記事に取って代られたね。あるエジプト人の見立て: ニコニコして、やたら愛想がいいのが日本人; 目と口は動くものの顔に表情がないのが韓国人、と。これから注意して観察しよう。)

300128 努力不要論 脳科学が解く! 「がんばってるのに報われない」と思ったら読む本   (フォレスト出版、平成26年刊)   中野信子 著
(自分で何でもやろうとする人のことは、他人は助けないから、そういう人はリーダーになれない (!) ≪自分を見ていてくれた、見抜いてくれたからこの人のために何かしよう、自分ひとりでは小さな人生しか生きられないけれど「この人について行ったら自分の才能を生かせるかもしれない」と思わせる力が、優れたリーダーには必要です。≫ ≪才能があるかないかは、自分が持っている適性を知って、自分の評価軸を確立できているかどうかに尽きます。≫ ≪大人の脳でも新しく神経細胞が生まれるが、新しい刺激(=ヒトが楽しいと感じること、つまり「遊び」)が入らないとすぐ死ぬ。ヒトは努力よりずっと、遊びが必要な生き物。≫ )

300118 日本人が知りたいフランス人の当たり前 フランス語リーディング   (三修社、平成28年刊)   釣馨(つり・かおる)・武内英公子(えくこ)・Ghislain Mouton 著
(これまで「日本について」の Q&A 本はさんざん買ったが、好奇心への刺激がないから積ん読に終わっていた。現地事情を語るこのシリーズは、いい。ただし、同シリーズでも朝鮮語で書かれた『韓国人の当たり前』は、個々のテーマの設定がさっぱり面白くなくて、買う気がしなかったけどね。| 300325 「ドイツ人の当たり前」読了|)

300108 近代絵画史(下) 世紀末絵画、ピカソ、シュルレアリスム   (中公新書、平成29年 増補版刊)   高階秀爾 著
(≪印象派は「写実主義」を追求する意図においてはアカデミスム以上に徹底していたが、まさにそれゆえに、印象派は結果的に写実主義の破産をもたらした。≫ そして写実主義の破産とともに、じつは古来から存在した素朴派・プリミティブアートが注目されるようになる。シュルレアリスムがじつは絵画よりも詩の世界でまず根付いたというのもおもしろい。イメージの偶然の出会いによる美がシュルレアリスム詩歌の本質だが、それって日本の連歌がすでにやってるよね。)

291230 近代絵画史(上) ロマン主義、印象派、ゴッホ   (中公新書、平成29年 増補版刊)   高階秀爾 著
(様式の桎梏からアートを解放するのに、ロマン主義の写実+想像力が果たした役割がいかに大きかったか。写実主義は、造形的意味においてより主題・モチーフの扱い方において革命的だった。そして、何よりもまず光をという印象派の追及はやがて画面から感覚的なもの以外の一切を排除することとなった。ついにゴーギャン曰く「印象派の画家たちは、自分たちの眼の周囲ばかり探し回っていて、思想の神秘的内部にまで入り込もうとしない。皮相的・物質的で、媚態だけからできあがった藝術であり、そこに思想はない」。ゴーギャンは、単なる外界の再現ではない、より心理的な内容をもった絵画を意識的に求めていた。ナビ派はそれを受け継いだ。)

291214 魔都の封印を解け! 世界エトランゼ街道    (防衛弘済会、平成20年刊)   大高未貴 著
(てっきり魔都・上海のことを語った本かと思って買ったら、それは最初のちょっとだけで、中国からパキスタン、アフガン、ドバイ、さらにエチオピアへと底辺をゆく旅。エチオピア人のメンタリティが日本人にけっこう似ているというのが意外。エチオピアの音楽も日本の東北を思わせるらしい。)

291129 連句恋々(れんれん)   (筑摩書房、平成4年刊)   矢崎 藍 著
(おとなとしていかに艶っぽく言葉の掛け合いができるかを、連句の多彩な形式で示す。式目の意義が腑に落ちる。)

291014 進化とはなんだろうか   (岩波ジュニア新書、平成11年刊)   長谷川眞理子 著
(生物は世代交代ごとに刻々と変化し、生物の「種」という枠じたいが相対的なものであることを納得させられる。144~153頁「タカ-ハト-ブルジョワゲームの利得行列」が実におもしろい。国際政治を考えるとき応用できる。皆がタカであればハトがましな場合があるが、いちばんいいのは自分の縄張りを決めて縄張りの中ではタカ、外ではハトとして生きること。安全保障の常識に収斂した。)

290927 連句のたのしみ   (新潮選書、平成9年刊)   高橋順子 著
(連句関連書を買い込んでいたが、ようやく紐解く時期がきた。≪よく歌仙を最初からスジを追って、ひとつの物語をたどるように読む人がいるが、その読み方は正しくない。1つの句はそれと隣り合った句に対してのみ意味をもち影響を与える。前句と並べて読んだときと、後の句と並べて読んだときと、微妙に表情の異なるところが面白いのである。≫)

290824 ちくま日本文学002 芥川龍之介   (ちくま文庫、平成19年刊)   芥川龍之介 著
(「地獄変」「鼻」「芋粥」「奉教人の死」など、恥かしながら初読。安部公房的な「河童」の毒に圧倒された。)

290710 お話 小さき人たちへ   (岩波書店、昭和15年刊、昭和50年に ほるぷ出版復刻)   野上彌生子(のがみ・やえこ)
(語りかけてくださる日本語が美しいし、ひとつひとつに実がある文章。「昭和15年」という時代の到達点をこの本で認識できる。)

290704 日本漢語と中国 漢字文化圏の近代化    (中公新書、昭和56年刊)   鈴木修次 著
("群学" は厳復による sociology の訳。"群" が society のこと。漢語としてはそちらのほうが素直。厳復は -ism に "宗" を充てたから、socialism は "群宗" となろうが「社会主義」より漢語らしい。漢語発展の本道が失われてしまったことへの哀惜の念ばかりつのる。新語格闘の切り口で明治時代の日本の知識人の息吹が感じられる本でもある。)


<平成280124 以降に購入・受領/読了>

300504/09 フリーランス、40歳の壁 自由業者は、どうして40歳から仕事が減るのか?    (ダイヤモンド社、平成30年刊)   Leopold Chauveau 著、山本夏彦 訳
(山本冬彦さんに紹介された。マンガ+アニメ最前線の話は、うちの長女の役に立つかもしれないので、進呈するつもり。それにしても、ぼくが大学生の頃って、インターネットがない分、ミニコミ誌全盛だったんだね。)

290818 Oxford Learner's Pocket Word Skills    (Oxford University Press 平成24年刊)  Ruth Gairns/Stuart Redman 著
(文字通りポケット判だが、語彙補充・整理に最高だ。)

290818 F in Exams: The Best Test Paper Blunders    (Summersdale Publishers Ltd 平成20年刊)  Richard Berson 著
(Hilarious! これでネット上の英語講座がひとつできそう。)

290818 To Explain the World: The Discovery of Modern Science    (Penguin Books 平成27年刊)  Steven Weinberg 著
(3月に和訳『科学の発見』を読んだ。その原著。)

290719 漱石の漢詩を読む    (岩波書店、平成20年刊)  古井由吉(よしきち)
(すてきな講義録。お蔵入りの漱石の漢詩集とペアで読みたい。)

290719 漢字と文化    (徳間書店、昭和51年刊)  藤堂明保 著
(いま一度、藤堂師の謦咳にふれるべく。)

290719 堀辰雄 杜甫詩ノオト    (木耳社、昭和50年刊)  堀辰雄 訳文、内山知也 解説
(井伏鱒二の洒脱な和訳とは異なり、近代自由詩ふうに綴った堀辰雄の杜甫読みだ。)

290719 漢文訓読の基礎    (教育出版、昭和60年刊)  中澤希男(まれお)・澁谷玲子 著
(用例が豊富に配された良著。自分の漢文の知識を総ざらえしてみたい。)

290713 Collins easy learning Polish Dictionary    (HarperCollins Publishers 平成25年刊) 
(このシリーズの仏・独・西版などは結局宝の持ち腐れにしてきたが、このポ版はまさにお待ちかねの学習単語集の出来という趣きだ。もうちょっと多言語版並みに印刷がよかったらベストだったね。)

290626 中国語イラスト辞典    (三修社、平成29年刊)  呉月梅 編
(明らかに中国人の手になるイラストなので、日本人が見過ごしがちなところも含め完璧に中国世界を再現しているのがいい。CG と手描きの融合が、ときに のけぞりそうな効果もはらみつつ、とにかく日本人では描けない世界を紡ぎ出す奇書。)

290626 日本人が知りたい中国人の当たり前    (三修社、平成28年刊)  林松濤・王怡韡(おう・いい)・舩山明音(あかね)
(とてもいい漢語読本。モノローグとディアローグを交互に展開しているのもいい。)

290618 We go to the gallery / We go out    (Dung Beetle Ltd, London 平成28年刊)   Mirian Elia 著
(ブラックなパロディ絵本の極北。イギリスのユーモアの尖端でもってアートを斬る。)

290617 Deutsch als Fremdsprache - Learner's Dictionary German-English・English-German   (Hueber Verlag, Munchen 平成21年刊)   Juliane Forssmann 主幹
(秀逸なる学習辞典。独英も英独も、つとめてドイツ語の用例を掲げる。英訳を添えていないから、より多くの用例が収録できる仕組みだ。発音表示も母音の曖昧化を明示し、現実のドイツ語に忠実。この名著が日本の書店に並んでいないのは残念。バーゼルの大書店 Bider & Tanner で見つけた収穫だ。)

290616 Kochen & Geniessen mit Loriot / Reisen mit Loriot    (Diogenes Verlag, Zurich 平成29年刊)   ? 著
(ブラックユーモアもの。きまじめな感じがフランスとちょっと違うね。)

290616 Dr glai Brinz [Baaselduitschi Ussgoob]     (Lenos Verlag, Basel 平成28年刊)   Antoine de Saint-Exupery 著、Anne Burri 訳
(『星の王子さま』のバーゼルドイツ語版。標準ドイツ語が透けて読めるのがおもしろい。いわゆるスイスドイツ語よりも標準ドイツ語からの乖離が大きい。)

290609 日本人が知りたいドイツ人の当たり前     (三修社、平成28年刊)  鎌田タベア・柳原伸洋 著
(とてもいいドイツ語読本。モノローグとディアローグを交互に展開しているのもいい。)


CD:

290516 Max Bruch: String Quintet in E flat major, String Quintet in A minor, String Octet in B flat major  (Hyperion Records 平成29年刊)
(英国の The Nash Ensemble が平28年4月にロンドンの教会堂で演奏したもの。作品は 1918/20年作。)

290516 Joseph Haydn: String Quartets "The Lark" "Emperor." W.A. Mozart: String Quartet "The Hunt"  (Deutche Grammophon 原盤 昭和39・49年、CD 平成24年刊)
(演奏は、英国で昭和23年結成・昭和62年解散の Amadeus 弦楽四重奏団。)

290516 Rimsky-Korsakov: Scheherazade. Borodin: Symphony No.2  (Decca Music 原盤 昭和55・59年、CD 平成21年刊) 
(ロシア5人組のふたりの 1888年と 1877年作の交響曲を Kirill Kondrashin がオランダで指揮。)

290516 Mozart: Symphonie Nr.40 G-moll, KV 550; Symphonie Nr.25 G-moll, KV 183  (Sony Classical 原盤 昭和50年刊) 
(Bruno Walter がウィーン・フィルを昭和27年と31年に指揮した名演。)

290516 Beethoven: Symphony No. 9 "Choral"   (Warner Classics 原盤 昭和30年刊) 
(Wilhelm Furtwängler が66歳のとき指揮した、昭和26年7月29日、バイロイト音楽祭再開記念演奏会での入魂の演奏だ。)

290509 DAVID BOWIE [FIVE YEARS 1969 - 1973]  (Parlophone Records 平成27年刊) 
(デヴィッド・ボウイの初期アルバム8つと、新編集の RE:CALL 1 という2枚組アルバム、あわせて11枚のCDが小冊子とセットに。)

290502 Renée Fleming|Distant Light  (Decca Music 平成29年刊) 
(Samuel Barber "Knoxville: Summer of 1915" ; Anders Hillborg "The Strand Settings" ; Björk Guðmundsdóttir [ˈpjœr̥k ˈkvʏðmʏntsˌtoʊhtɪr] "Virus," "Joga," "All Is Full of Love" 演奏は Royal Stockholm Philharmonic Orchestra.)

290502 Sol Gabetta|Edward Elgar・Bohuslav Martinu チェロ協奏曲 ベルリンフィル ライブ  (Sony Classical 平成29年刊) 
(劇的な音楽。平26ライブ録音。指揮は Sir Simon Rattle. )

290502 寺下真理子|ロマンス  (King Records 平成29年刊) 
(バイオリンの甘美さと透明さが際立つ選曲。須関裕子さんのピアノとともに。すてきなジャズ トランペット。5人奏のニューオリンズ録音。)

290502 高澤 綾|Crescent City Connection  (King Records 平成29年刊) 
(すてきなジャズ トランペット。5人奏のニューオリンズ録音。)

290410 LA LA LAND  (Interscope Records 平成28年刊) 
(映画「ラ・ラ・ランド」を観た TOHO シネマズシャンテで購入。)

290408 ★ (= "Black Star")  (ISO Records 平成28年刊) 
(デヴィッド・ボウイ69歳の遺作となったアルバム。「デヴィッド・ボウイ展」で購入。)

290408 Lazarus  (Jones Tintoretto Entertainment 平成28年刊) 
(メロディアスな魅力に満ちている。)

290407 スラヴ賛歌 ~ ミュシャとチェコ音楽の世界  (キングレコード、平成29年刊、原盤 平成19年刊) 
(国立新美術館の「ミュシャ展」で購入。「スラヴ叙事詩」20点の大作群のチェコ国外初公開を見て、ムハへの認識が根本から改まった。)

290407 Smetana: Ma vlast (わが祖国)  (Warner Music 平成29年刊、原盤 昭和53年刊) 
(「スラヴ叙事詩」連作紹介の小冊子つき。)


DVD:

270430 睡蓮の人  (トモヤス・ムラタ・カンパニー、平成15年)
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